いつまでたっても夜明け前

エンタメとクィアについてのお話。

『TIGER & BUNNY2』の虎徹さんに見る2022年のおじさん像

※本記事には『TIGER & BUNNY2』のネタバレが含まれます。

 

TIGER & BUNNY2』の後半パートが配信されたので重い腰を上げて観たのだが、重かった腰はいつのまにか軽やかになり最終話まで一気に観てしまった。

本作は2011年に放送されていたシリーズ(とその後公開された劇場版)の続編だが、11年前の作品の続編を2022年に観ることにちょっと恐怖を感じていたし、前半パートに気になる箇所が多かったので後半パートを観るのが億劫だなと感じていた。

しかし蓋を開ければ最高に面白くて最高に「今」の話をしてて、作品として見応え十分だった。のでTwitterで興奮1人実況などをツイートしていたわけなのだが、ちょっと気になることがあったのでブログを書く。(ふせったーで書こうとしたら思いのほか文量が多くなった。)

 

本作はもともと「サラリーマンとして働くおじさんを応援するアニメ」として制作され、放送開始したら女性ファンが多くついたという流れがあるが、「2の内容がおじさん応援になってない」というツイートを見かけた。
11年前ならまぁ分かる意見だが、あれから11年経って新作が配信されたのは2022年。この11年で社会のいろんなことが動き、社会的に「おじさん」と呼ばれる年齢を重ね仕事でもそれなりの立場に居たり家庭があったりする男性(その象徴が虎徹さんだけど、虎徹さんがアポロンメディアでどのくらいの地位に居るかは明確に分からないが、そもそもヒーローという地位と名誉を得やすいポジションに居ることは確か。)をエンタメ内でどう扱うか、もこの11年で変わって来た。

 

タイバニ2は新人が3人入って来たり、タイプの違うヒーロー同士がバディを組んだりといろんなことが新しくなっているが、立場や価値観が真逆のヒーロー同士がバディになってるのが肝だ。
1の時には中堅とルーキーが組まされるという分かりやすい表現で、しかも結構ゴリ押しで新人の支えになるような描写が多かったと思う。2ではそういう雑な描写はほとんどなく、世代も性別も違うバディが少しずつ相手のことを理解できるよう寄り添ってバディになって行く様が描かれている。そういうちょっとずつちょっとずつ積み重なった新しい描写を経て、最終的に虎徹さんが(能力消滅という理由はあれど)後輩たちに仕事を任せて一線を退く話に着地してる。

2での虎徹さんは1の時よりかなり責任ある大人としての描かれ方をされているし(楓ちゃんにヒーローとはを語るパートやユーリさんに一言言っちゃうパートなどなど)1での「憎めないかわいいおじさん」からかなり脱却していたのでは?とも感じた。


後半パートはNEXTというマイノリティと非NEXTというマジョリティ間で起こる格差や差別の話が主題になって、それまで(幼少期のあれこれはあれど)ヒーローというNEXTの能力を全肯定されるような立場で活躍していた虎徹さんが、「ヒーローが活躍することによってNEXTへの偏見が高まる」というかなり大事な話を受け止め、「自分になにができるか」と模索する描写が出てくる。
NEXTは清廉潔白であることや人の役に立つということを求められがちで、そこから外れるNEXTは価値がないとみなされるような社会構造になっていることも描かれていた。
これらは現実世界でも問題視されていることだし、こうした問題を率先してどうにかしていく責任が、虎徹さんに象徴されるおじさん世代にはあるはずだ。

 

今作においての虎徹さんは、「その世代がなにを背負いこれから生きて行くべきなのか」をもとにキャラクター設定が新たに構築されていると感じた。それゆえに「おじさんを応援する」というよりも「これからおじさんはどう進むべきか」を考えるきっかけとして機能させている部分があるが、それが=おじさんを応援していないとは思わない。
もちろん2でも疑問に思う描写はいくつかあったが、虎徹さんを軸に進んできたタイバニという作品が、2022年にどう描かれるべきかを考えると納得の行く展開になっているなと感じている。


私たちはバニーのように今幸せかどうか「maybe」な状態が多いけれど、いつだって誰かにとってのヒーローになれる。だからいつか胸を張って「Yes」と言えるその日まで、社会をよりよくして行かなければいけないのだ。

 

最後に、今回のようなおじさんのアップデートを上手く表現している曲を貼っておく。

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